辛い(からい)と辛い(つらい)の使い分けと違い・同じ字を使う理由

寒い日が続くと、熱くて辛いお鍋が食べたくなります。そんなこの時期に限らずよく目にする「辛」という漢字。

誰しも一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。「辛い」と書いて「からい」はもちろん「つらい」とも読みますよね。

どうやって書き分けるの?読み分けについては、前後関係から判断できる場合がほとんど。

しかし、書き分けるとなるとどうでしょう。それを読む相手を気遣って、気にする人も多いのではないでしょうか。

例えば、こちら。「カラすぎてツラい!」

……さて、どっちを漢字にしようか?両方漢字?読みにくいかな?と気になりますよね。

日本人の「お・も・て・な・し精神」は、親しい人にほど発動するものです。

やはり日常生活の中で「辛い」を使用するときに困るのは、読み分けるときよりも断然書き分けるときです。

この記事を読めば、なぜ同じ漢字を使うのか?どうやって書き分けるのか?がわかります。

漢字には成り立ち(その形になった理由)があり、国がその書き分け方を定めているからです。

辛い(からい)と辛い(つらい)は「音読み」と「訓読み」

日本には、中国から漢字が伝わるまでは文字がありませんでした。

文字というのは、自分たちの言葉を書き表すために使う独自の記号みたいなもの。

つまり、話し言葉はあるけど、それを表す文字がなかったということです。そこに中国から漢字がやってきた。

しかし、中国語を書き表すために考えられた文字である漢字は、当然中国語の音しか存在しておりません。

その発音を日本人が耳コピした結果の読み方が、現在の音読みです。だから本来の発音とは似て非なるもの。

それを最初は、当て字のように使っていました。

「愛羅武勇(アイラブユー)」とか「本気(マジ)」みたいなことですね。お察しの通り、これは漢字や熟語の意味も踏まえて考えている節もある当て字です。

しかし、当時は完全にただの記号!全く関係性のない漢字を50音覚えるなんて、考えただけで嫌になりますね。

「なんのために覚えるの?覚えないと死ぬ?」

だから、日本中の人が読み書きできるようになるまで300年以上かかってしまいました。

しかし、何も工夫をしなかった訳ではありません。ただ使っているだけでは広められませんからね。

使いやすくするために、中国人の使い方を真似て日本語の意味を持たせたのです。

つまり、日本語訳をしたわけですね。これが現在の訓読みと呼ばれる読み方です。

勘の良い人はピンと来ましたか?

日本語訳をした結果、複数の意味を持つ漢字が生まれたのです。英単語だって1つで複数の訳があります。

例えば、「辛い(からい)」を表すhotだって「熱い」という他の意味をもっています。

そんな理由から訓読みは複数ある場合が多いのです。「つらい」「からい」はそのような訓読み(日本語訳)のうちの一つです。

 辛い(からい)と辛い(つらい) が同じ漢字の理由

しかし、まだ「なぜ同じ漢字なのか?」という疑問は残っていますよね。

「辛」という漢字を「つらい」と「からい」の両方で中国人が使っていたのは何故なのか?

まず、「辛」という漢字の成り立ちを見てみましょう。国語の授業で、ものの形をかたどった文字として「象形文字」という言葉を習いましたね。

ものの形をかたどった絵をもとにして形ができた漢字のことです。「口」「木」「月」「鳥」なんかが代表的でわかりやすい例ですね。

「辛」も象形文字の一つです。何の形に見えますか?

実は、入れ墨を入れるときに使用する針を象った文字なのです!上の「立」が持ち手、下の「十」の下に伸びている最後の一画のが針です。

スッとはらって書くと・・・・・・たしかに痛そうですね。

入れ墨は、針や刃物で皮膚に傷をつけて、そこに染料をすりこんで色をつける身体に直接する装飾のことです。

知ってるよ!という方も、いると思いますが、ここでいう入れ墨は「桜吹雪」だとか「おしゃれなタトゥー」のことではありません。

罪人に刑罰の意味で入れたものを入れ墨!自分の意思で自発的にするような「おしゃれなタトゥー」はそれと区別して「彫り物」と呼びます。

日本でも、江戸時代には罪人の腕に刑罰として入れ墨をしていたんですよ。その「刑罰」の意味から「つらい」、さらに「からい」まで意味が発展したわけです。

しかし、「つらい=からい」ではない!そうなんです。

この「辛」が二つの全く別の意味を表しているように感じることが、一番不思議でひっかかる部分ですよね。

  「からい」「つらい」の意味

そこで、「からい」「つらい」のそれぞれの意味を見てみましょう。まず、「からい」というのは実は味覚ではありません。

日本の五基本味は「甘味・酸味・苦味・塩味・旨味」です。なんと、「辛味」は入っていません。

激辛ブームですし、これからお鍋のおいしい季節になって辛いお鍋を食べる方もたくさんいるというのに!

辛いものに携わっている方に怒られてしまうかもしれませんが、「辛味」は日本の五基本味には入っていないのです。

しかし、繰り返しになりますが「辛味」は味覚ではないのです。これについてマツコ・デラックスさんが面白いことを言っていました。

「辛味に強い人は痛みにも強い」

大きくうなずいてしまう人も多いのではないでしょうか。

そして実は、このマツコさんの発言……ただ面白いだけでなくて、まさに答えそのものだったのです。

つまり、「辛味」とは「痛み」のことなのです。ワサビで鼻がツンとしたり、唐辛子で口の中がヒリヒリしたりしますよね。

「辛味」は神経刺激で、味覚ではないのです。あまりにも痛いと「辛い(つらい)」ですよね。

これが、「刑罰(針や刃物で刺される)」が「痛い」、「つらい」、「からい」と発展した理由です。

辛い(からい)と辛い(つらい)の書き分け

最後に、重要な書き分けについてです。

皆さんは「辛い」と一言だけ書かれていたら、「つらい」と「からい」のどちらで読みますか。

ほとんどの人が「からい」と答えるのではないでしょうか。

なぜなら、ほとんどの場合「辛い」と書いてあったら「からい」と読むからです。

漢字の書き分けは「常用漢字表」に定められているものが確実!

「常用漢字表」は内閣が定めた現代日本における日本語の漢字で、「読みやすい文章にするために」という目的で定められているものです。

その「常用漢字表」には「辛」の訓読みは「からい」しか載っていません。「からい」は漢字で「辛い」と書きましょう!

「つらい」は平仮名で「つらい」と書きましょう!と国が定めているということです。

つまり、国も「辛い」の書き分けが難しいと判断したということです。

使用頻度が高いものが優先されるので、「からい」という意味で使うことが多かった証でもありますね。

まとめ

同じ漢字の理由

刑罰の入れ墨は痛くてつらく、食べ物で痛くてつらいことを辛いというから。そんな風に昔の中国人が使っていたのを日本語訳したから。

書き分け

常用漢字表に定められている通りに「つらい」は平仮名で書き、「からい」は漢字で「辛い」と書く。それが日本人の「お・も・て・な・し」