とある漫画なんかで、500円玉を握りつぶしたり、それこそ単純にりんごを潰したり、「握力スゲーッ!」となるシーンがありますよね。それを動物に当て嵌めると、なんとコアラがでてきます。しかも、その数値1t・・・果たしてその筋力は本当なのでしょうか?
そもそもなんでコアラがその話題にあがったのか。その真偽を他の「握力がすごい説」をもつ動物と比べてみていきましょう!
コアラの握力が1tもない理由
まずは残念なお知らせからです。コアラの握力は正確には測ることができません。あくまでも推定であることをまずは認識して下さい。コアラの握力が測定不能で、エビデンスに基づいていない理由は3つあります。
それぞれに合った握力計を製造しなければならない
握力は「クラッシュ力(握り潰す)」「ピンチ力(物を摘む)」「ホールド力(握ったものの保持)」「ものを開く力」の4つの筋力に分類されます。
主にクラッシュ力を計測するのが通常です。クラッシュ力は握力計を利用して測定する必要があります。!しかもその規格はほとんど人間の手の形を基準にしています。しかも握り方も決まっているので、それをどのように対象の動物(コアラ)にやらすのかという現実的な壁があるのです。
サンプルを大量に調査する必要がある
一概にコアラっていっても「種類」「雌雄」「年齢」といったカテゴリーに分けて調べなければなりません。もはや握力だけで国家プロジェクトですね。なかには、握力を調べることを虐待と訴える価値観を持つ人もいるかもしれませんから、よほどの予算と探究心の同意が必要となります。
全力で握っているか不明
大脳が発達していない動物に全力で握力系を握らせることができるでしょうか。答えはいわずもがなNOです。物をつかめないイヌやネコに関しては、おのずと握力が測れないということになります。
コアラの握力が1tもあるという説は、2004年に日本テレビの情報系番組「ザ・ワイド」にて特集されました(実際には、動画も残っていないし、どうゆう検証がなされたのか不明で伝聞でしかありませんが・・・)。上記の3つの理由よりコアラの握力1t説は完全なるデマです。
コアラの魅力は握力じゃない
コアラの握力が1tあるという情報があまりにも先行しています。そこで、コアラが本来持っている可愛げな特徴をみてみましょう。
コアラはオーストラリア東部の森林に生息している哺乳類
コアラは主に木の上で生活をしています。体重は4〜15㎏。その推定握力は100kgwもなく、20〜30kgwほどです。
コアラの指は、一方の3本に対してもう2本が反対側にあるので、同じくらいの大きさの筋肉を持つ動物より効率よく握れるのです。
コアラを抱っこできる場所は少なく、日本国内ではまず不可能です。オーストラリアまで行かないと願いは叶いません。オーストラリアでコアラを抱くことを許可されている州は「Western Australia(西オーストラリア州)」、「South Australia(南オーストラリア州)」、「Queensland(クイーンズランド州)」です。(2017年11月 時点)
コアラに握力があるならば、人に抱っこをさせるようなイベントは絶対にできないはず!
掴まれたら痛いと感じる程度の握力はありますが、人の骨を粉々にできるような握力はコアラには持ち合わせておりませんので、安心して下さい。コアラはつぶらな瞳とふわふわした毛並みがカワイイやつなんです!
握力が強い動物5選
握力の単位はkgw(重量キログラム)です。1㎏の質量をもつものにかかる重力(筋力)の強さをいいます。いまいちピンときませんね。人間を例に挙げましょう。日本人男性の平均握力は45〜50kgw/女性は30kgwというデータがあります。
ちなみに、人類の握力最高値はマグナス・サミュエルソンが記録した192kgwです。人間と比較して推定ではありますが、握力が強いとされる動物を5つ紹介します。
ゴリラ (推定握力:400~500kgw)
なぜこんな凄い握力の数値が見積れるのか?答えは、ゴリラは草食動物にも関わらず筋トレをしなくても筋力が衰えないという事実にあるでしょう。ゴリラの食事量は凄まじく1日の食事量は18〜30㎏(バナナ215本分)なのです!
また巨体にも関わらず軽々と木に登ったりすることから、このような推定握力が換算されたのでしょう。握力以上にすごい筋力です。さすがゴリラです!筋力の代名詞なだけありますね。
オランウータン(推定握力:350kgw)
低地の熱帯雨林に主に生息するオランウータンは、その長い手脚を特徴に広い行動圏を持っています。
体重120㎏あるオランウータンのジャックの筋力を利用した腕渡りの動画をみると、ゴリラに次ぐ握力を持っていても不思議ではありません。
チンパンジー(推定握力:200〜300kgw)
体重は重い雄でも60㎏程度、その体重比率はおよそ5倍の握力と驚異です。激怒したメスのチンパンジーの握力527kgwもあったという噂もあります。(ゴリラよりすごいけど、どうやって計測したんだ!)
クマ (推定握力:150kgw)
クマの被害が多く、人を軽々と殺傷する筋力があることから、このような推定握力が叩きだされました。意外性もなく、ニュースによくなるので握力が強いイメージに結びつきますね。パンダもこれ位ありそうです。
ニホンザル(推定握力:35kgw)
ニホンザルの体重は10㎏が平均で体重比が3倍の握力となるので、それを考慮すると動物界でも指折りの握力を持つと推定されます
正式に筋力数値ははじきだせません。しかし、自分の体重を支えつつ手のみで木を移動することから、「握力が○○kgwある」という推定結果がほとんどです。その中でやはりゴリラなどの猿系の動物が上位を占めます。
コアラも例外ではなく、木の枝や幹につかまりながら生活をしていることから、「コアラの握力が凄い」というイメージとともにテレビで特集が組まれたのでしょう。
また同じ木の上で生活する「ナマケモノ」がいますが、残念ながら握る手がなく爪で木を移動しているため握力は0kgwです。
まとめ
コアラを含めて動物の握力を計測することはできません。
理由は3つ:①個々の握力計を製造しなけらばならず、②サンプルを大量に採取する必要があり規模もでかい、③さらには全力で握っているのか不明である。
その中でも推定握力が高いと言われている5種類紹介しました。
①ゴリラ ②オランウータン ③チンパンジー ④クマ ⑤ニホンザル
コアラは愛くるしい動物であって、人体を破壊する握力はもっていません。握力が最強じゃないと分かっても、魅力的なフォルムに癒される方も多いことでしょう。