冷蔵庫に熱いものを入れても大丈夫?腐る危険性や食中毒の可能性について

毎日食べる食事。一生懸命、作った料理を傷ませないために冷蔵庫で保存する方がほとんどではないでしょうか。しかし、いざ、しまおうとした時に温かいままだと躊躇する方でしょうか?

それとも、そのまましまう方でしょうか?どちらが良いのか、一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。実は、料理を冷ますことの意味、冷まさないことで起きること…

それらを知れば迷わないし明日からでも試してみたくなる方法が見つかります。実際に、筆者は過去に何回か保存に失敗して傷ませてしまいましたが、何点か気をつけるようにして以降は、まず傷ませません。

ここでは美味しく作った料理を安全に長持ちさせる方法、間違えると何が起きてしまうか、どういったことに気をつければいいのか、をご紹介していきます。

せっかく作ったなら、最後まで美味しく安全に食べたいものですよね。記事を読み終えたときには、家事上級者への階段をまた一歩上がれるはずです。

冷蔵庫に熱いものを入れると腐る可能性はある?

結論から先に言ってしまいますと、冷蔵庫に熱いものをそのまま入れると腐ります。では、何が腐ってしまうのでしょうか。しまった料理と、先に入れて、すでに冷やしてある周りのものの両方です。

まず、熱いまましまった料理はなぜ腐るのか。熱いままの状態で冷蔵庫に入れてしまうと、庫内と容器内に生じた温度差により容器や蓋、ラップに湯気が水滴に変わりくっ付いてしまいます。当然、容器内の料理は蒸れた状態になります。

蒸れた状態のものは冷えていく過程で傷んでしまいます。次に、周りのものが腐ってしまう理由は何なのでしょうか。

熱いままの状態で料理をしまうと、近くにあるすでに冷えているはずのものも温まってしまいます。これが原因となり、周りのものも腐るのです。

更に、熱いままのものを冷蔵庫に入れることで、庫内の温度が急上昇し、それを冷蔵庫が一生懸命、冷やそうとすることで電気代も余計にかかってしまいます。

つまり、熱いものを冷蔵庫にしまう際には粗熱を取ってからしまう必要があるのです。「粗熱を取る」これも、よく聞く言葉ですが粗熱って何度くらいになれば取れたと判断できるのか曖昧ですよね。

「粗熱を取る」という言葉には二通りの意味があります。

①調理工程の「粗熱を取る」

これは、調理する工程で型崩れを防いだり、一緒に調理するものを煮えさせたりしないためのものです。この時の適温は、指で触れて少し温かい40℃くらいと言われています。丁度、湯舟に張るお湯くらいの温度ですね。

②冷蔵庫にしまうために「粗熱を取る」

こちらは、一般に室温まで温度を下げることを言います。季節や部屋の状況によって室温も変わってしまうとは思いますが、厚生労働省が呼びかけている夏場の室温の設定温度は28℃です。

これを目安にすると28℃までは冷ますことを、室温まで温度を下げる=「粗熱を取る」と考えていいのかと思います。本来は、中心温度を20℃以下まで下げることが理想です。

実は、食中毒を引き起こす原因菌の多くは20℃~50℃で繁殖すると言われています。その中でも人間の体温に近い35℃~37℃で最も活発に増殖してしまいます。

またリスクを減らすには、30分以内に中心温度を20℃付近まで下げることとしています。量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省)

ただ、これは、暑い厨房の中を前提としているので一般家庭とは少し状況が違うと考えられます。こうしたことから考えられるのは、あまり時間をかけずに28℃まで温度を下げることが重要ということです。

熱いものを冷蔵庫に入れた時の食中毒のリスク

上記でも少し触れたように、熱いまましまったものは蒸気で蒸れています。このことから、原因菌が増殖しやすい状況になってしまっています。

家庭で繁殖しやすい食中毒の原因菌にはどんなものがあるのか、また、どんな症状を引き起こすのか…知ってるようで知らないものです。

以下にまとめてみました。

菌の種類特徴潜伏期間症状
サルモネラ属菌鶏、豚、牛の腸管や河川、下水に分布。

菌に汚染された卵、食肉調理品(特に鶏肉)、うなぎやスッポンが原因となり感染する。

少量の菌で発症。

6時間~72時間腹痛

下痢

嘔吐

発熱

(38℃~40℃)

腸管出血性大腸菌O157人や動物の腸管に存在する大腸菌の一種で下痢性大腸菌と呼ばれる。

牛などの家畜が菌を持っている場合、糞便に汚染された食肉から引き起こされる。

4~8日間激しい腹痛

水様下痢

下血

溶血性貧血、血小板の減少、急性腎不全

重傷の場合は死亡に至る

カンピロバクター家畜や家禽、ペット、野生動物、野鳥が保有。

食肉(特に鶏肉)、二次汚染による飲料水やサラダなどの汚染による感染。

1~7日間発熱(37℃~38℃)、倦怠感、頭痛、筋肉痛

吐き気、腹痛、下痢

腸炎ビブリオ15℃以上の海水や海泥で活発に活動。

この温度で魚介類に付着している。また、手指や調理器具を介した二次汚染によって感染。

8~24時間

(短いと2、3時間)

激しい腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐
ボツリヌス菌土壌や海、川、湖などの泥砂中に分布。

ビン詰、缶詰、真空パック食品等の酸素のない状態の食品が原因になることが多い。

8~36時間吐き気、嘔吐、視力障害、言語障害、嚥下困難等の神経症状

重傷の場合は呼吸麻痺

ウェルシュ菌人や動物の腸管、土壌、水中などに分布。

煮込み料理など、中心部が酸素のない状態になることで菌が増殖し感染。

6~18時間腹痛、下痢、下腹部の張り

 

食中毒の原因菌はこうした特徴を持ち、様々な症状を引き起こします。実は、食中毒の原因菌のほとんどは、冷蔵庫内の目安温度である10℃以下で活動が遅延し、家庭の冷凍庫内の目安温度である-15℃で停止するのです。

上記でも述べたように、原因菌は20℃~50℃で繁殖し、35℃~37℃で活発に増殖するので、熱いままのものを冷蔵庫に入れてしまった場合、粗熱を取っていないものは蒸れて温度が保たれてしまうことで原因菌が繁殖します。

また、周りの食品も庫内の温度が上がることにより温められ食品内の菌の働きが活性化してしまうのです。

冷蔵庫に熱いものを入れることで故障の原因に

では、冷蔵庫に熱いものをそのまま入れてしまうと故障するのでしょうか。

答えとしては「故障する可能性はある」でしょう。冷蔵庫では…

庫内を循環している冷媒が、熱いままの食品の熱を吸収

→コンプレッサー(圧縮機)で冷媒は高温の液体へと変化

→コンデンサー(放熱器)によって放熱されて常温の液体に変化

→チューブを通りながら気体に変化

→気体になった冷媒は冷蔵庫内の熱を吸収する代わりに冷気を放出

という循環が行われて、中のものが冷やされています。しかし、今の冷蔵庫には、熱いものを一気に冷凍する機能が付いていたりして性能が良いものが多いのが事実です。

すぐに壊れてしまう、という可能性は低いと言えます。ただし、湯気で冷蔵庫内が結露して霜取り経由で排出されずにセンサー類のコネクタ周辺で結露すると、サビで壊れることがある、という意味では故障の危険性はありますね。

冷蔵庫に入れる前に、、熱いものの粗熱を正しく取る方法

ここまで、熱いものをそのまま冷蔵庫に入れてしまうと何が起きてしまうのか、というのを見てきましたが、それなら粗熱はどう取ればいいのだろう?という疑問が残っています。

ここではそれを解決していきたいと思います。方法は簡単です。

鍋やフライパンに入れたままの状態で冷ます、これだけです。時短をしたい時には、鍋やフライパンの下に濡れたふきんを敷く、または、鍋やフライパンごと冷水に浸す、といった方法があります。

物が冷えていくときの特徴として、周囲から中心に向かって冷えていく、というのがあります。それを利用する形です。

熱いものの粗熱を取るときに注意すること

では、何に気をつけて粗熱を取ればいいのでしょうか。

  • 冷水に浸して粗熱を取るときには、鍋やフライパンの中に水が入らないようにすること
  • カレーやシチューなどの煮込み料理のん取るときには、ヘラなどでゆっくりと混ぜて空気を中心に入れるようにすることで、より早く温度を下げられる

こうしたことに注意して粗熱を取ると良いでしょう。

≪まとめ≫

  • 冷蔵庫に熱いものをいれてしまうと、入れたそのものも、周囲のものも腐ってしまう
  • 熱いものをそのまま冷蔵庫に入れると食中毒の危険性が上がる
  • 熱いまま冷蔵庫に入れてしまうと、冷蔵庫が故障する危険性も考えられる
  • 熱いものは粗熱を取ってから、冷蔵庫に入れる
  • 粗熱を取るときには、鍋やフライパンのまま、冷たいふきんを敷くか、冷水に浸して容器ごと冷やす
  • 冷やす際には、中身をまんべんなく空気に触れさせ、冷水を使うときには中に入れないようにする

せっかく自分や家族、恋人のために作った料理。安心安全に最後まで食べるには、色々と気をつけなければいけないですが、ここまでに述べてきたことに留意してして頂ければ、家事の上級者の仲間入りは間違いないはずです。

是非とも、安心安全な食卓を楽しんでください。