一瞬にして大切な家屋を燃えつくしてしまう火災は恐ろしいですよね。
しかし、全国で発生している火災の原因の第1位は、放火または放火の疑いのある火災であることを知っていますか?
火災全体の約2割を占めています。
今回は、放火の実際の方法や手口、放火に合わないためにはどうしたらよいのか、また、放火の時効について解説します。
目次
放火の定義は?
まず放火とはなにかを法律的な要件や罪の重さなどについて解説します。
火災が起こるのには、故意に火をつける放火とついうっかりとした火の取扱いをしたために火災になってしまう「失火」の二つがあります。
放火は、燃やしてやろうと言う意思があって出火せることです。また、火が出るような物を作って出火させた場合も放火になります。
そこで、放火と失火の違いですが、例えばろうそくの火をつけたまま倒れてしまうと、ろうそくの火が建物に燃え移って燃えてしまうかも知れないと言う認識があって、そのまま放置して結果的には火事になってしまった場合などは放火に問われることが考えられます。
また消火や消防への通報義務がある人が目の前で出火したのに消火することや、消防署への通報を行わなかった場合も、放火罪に問われる可能性があります。
放火罪は大きく分けると3種類ある
放火罪は大きく分けて3種類あります。その種類によって刑罰も変わってきます。簡単に言うと、建物の違いによって刑罰が変わります。
例えば、人が住んでいる建物で火をつければ死傷者が出る可能性がある場合にその建物に放火すればその分刑罰も重くなります。
それでは一つずつ解説します。
現住建造物等放火罪
現住建造物とは、現在人が住んでいたり、生活をしている建物や乗り物などのことをいいます。
法定刑は、非常に重くて「死刑または無期若しくは5年以上の懲役」です。
それでは、犯人が1人で住んでいる建物に放火した場合はというと、次の非現住建造物等放火という罪になります。
非現住建造物等放火罪
現在、人が住んでいない建造物に放火した場合は、非現住建造物等放火罪と言うことで「2年以上の有期懲役刑」に該当します。
この建造物が放火した犯人の所有物であった場合は、「6ヶ月以上7年以下の懲役」と罰が違ってきます。
しかし、犯人の所有物であっても保険がついていたり、他人に貸していたりすると他人の所有物として扱われます。
建造物等以外放火罪
人の乗っていない自動車や自転車など建造物以外に放火した場合は、「1年以上10年以下の懲役」に該当します。
本人が所有者であれば「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」になります。
放火の実際の方法や手口
CASE1: 勤務先で現金250万円盗み、別の日に事務所放火、全焼
勤務先で昼休みになって無人になったところで、社員の給料分250万円を盗んだあと、9日後、事務所を放火・全焼させたと言う事案です。
盗んだ後すぐに放火したのではなくと言うのは、会社から盗まれたことから警察が捜査を始めたため証拠隠滅を図ったものと思われます。
CASE2: 空き巣に入れず頭に来て放火をした15歳少年グループ逮捕
少年2人は、約60件の盗みを繰り返していたが、無隅に入ろうと無施錠のオフィスなどを物色していたが、見つからないことから腹を立てて駐輪していたバイクに放火し、同オフィスなど2棟を焼損させたものです。
連続放火の事例
次に連続放火事件の例をご紹介します。
諏訪地方連続放火事件
数ヶ月の間に資材小屋・中学校の体育館・自動車修理工場の乗用車など計9件が放火された事件です。
容疑者は20歳の女で、この事件で死傷者は出ていませんが、現住建造物への連続放火事件として他人に危害を与える危険性も十分にあったため、懲役10年の実刑判決を受けています。
JR東日本連続放火事件
JR東日本の施設内で起きた連続放火事件です。合計7件の施設のケーブルなどが燃やされた事案です。
逮捕されたのは自称ミュージシャンの40歳過ぎの男です。放火罪ではなく、JR東日本の業務を妨害したとして、威力業務妨害罪として起訴され判決を待っている状態です。
放火されたのになぜ放火罪でないのかというと、放火がされたのはJR東日本の設備の“一部”で、放火によって公共の危険が及ぶとまでは判断されなかった事だと言うことが言えます。
火曜日の放火魔事件
新宿の雑居ビルのゴミ捨て場や、張り紙など合計26件の連続放火事件で、理容師の男が逮捕されました。
火曜日の放火魔と言われたのは、火曜日にばかり放火事件が起きていたことからですが、犯人を捕まえると理容師は月曜日が休みで、酒を飲んだ帰り(日付が変わって火曜日)に放火を行なっていたことが判明しました。
犯人は懲役10年という重い判決を受けています。
放火が常習性になってしまう理由
放火は常習性になってしまう事もあります。
ではどうしてそのような事態になるのか? 次のようなことが考えられます。
罪の意識の希薄さ
いたずら半分で火をつけてしまう場合があります。
結果的にはボヤ程度で収まったのであったとすれば、犯人の放火したと言う罪の意識は薄く安易な、ムシャクシャしたなどの理由で放火を繰り返してしまうことが考えられます。
放火を行うことは簡単に出来てしまう
ライターやマッチ1つあれば放火という犯罪が簡単に行うことができます。
殺人や強盗などと同じ重大な罪なのですが、それらの犯罪と比べて簡単に犯行ができてしまいます。
証拠が残りづらい
放火の犯行に使用するのは誰でも簡単に入手できるライターなどの発火装置です。
また、殺人や強盗・強姦などはDNA型鑑定や凶器の購入経路の追及などで証拠が残ることが多いのに対して、放火は証拠が残りづらいことがあげられます。
以上のように罪の意識の希薄さからも簡単に犯行が行えることから連続して犯行を行うものと考えられます。
放火の対処方法
放火被害に遭わないようにするためには、放火の予防対策をすることが重要になります。
放火は、悪意をもって行われる犯罪なので事前に予防することは難しいかも知れませんが、犯人が火をつけようとしても火をつける媒体がなければ火はつきません。
「放火されにくい環境をつくっておく」ことが予防策となります。
予防策は色々ありますが、次の重要なものを列記します。
・アパートやマンションに住んでいる場合は,新聞紙や雑誌など燃えやすいものは廊下や階段などに置かない。
・燃えやすいものが家の周りにある場合は、整理整頓し,ゴミは指定日の決められた時間に出す
・隣近所との良好な関係を保って、長い間留守にする時には,隣近所に一声かける。
・外出する時や就寝の前には,家や物置などの戸締まりを確認することを徹底する。
・家の周りを明るくすることは警戒になるため、外灯などを点ける。
・自動車やオートバイのボディカバーには,「防炎製品」を使用する。
・物置や車庫には鍵をかけ,簡単に出入りできないようにする。
放火の時効
刑事訴訟法は罪の軽重によりいつまで裁判にかけられるかを定めています。
公訴時効といって、201年4月27日に公訴時効が改正となり、殺人罪などは公訴時効が無くなっています。
まず、公訴時効がない主な犯罪は、殺人罪・強盗殺人罪です。
人を死亡させていない死刑に当たる罪は、公訴時効が25年ですから、現住建造物等放火罪は、これに該当しますから人を死亡させていなければ、公訴時効は25年になります。
建造物等以外の放火は長期10年以下の懲役で非現住建造物等放火は長期7年以下の懲役ですから、人が死亡していなければいずれも公訴時効は、5年となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。放火について解説してきました。
1. 放火は故意に火をつけることが不注意で出火した失火とは違っている。
2. 放火は、消火義務や通報義務がある人が積極的に消火しなかったり、通報しなかった場合には放火の罪に問われる可能性がある。
3. 放火は罪の希薄さや簡単に行えることから連続犯行の恐れがある。
4. 放火を防ぐためには、自分の放火に対する認識を持つことと、環境の整理に努めること。
5. 放火の時効は、人が死亡していなければ現住建造物等放火は25年、非現住物等放火と現住物等以外の放火は5年である。
と言うことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
一瞬で大切な家などが燃えてなくなってしまう恐ろしい放火に合わないために、これまで述べた放火の予防策を徹底して下さいね。