お菓子にお酒、化粧品―。生活するうえで欠かせないものばかりですが、これらすべてに食紅が使われていること、ご存知ですか?私は子供の頃、赤色の食紅を入れてクッキーづくりをしたことがあります。
でも、あまりにも真っ赤な粉を前にして、なんか体に悪そう・・・なんて不安に思ったりもしたものです。食紅は、食べ物を美味しく見せるために使われる着色料。
数多くの加工食品に含まれていて摂取する機会が多いだけに、その害の有無ぐらいは把握しておきたいところ。そこで今回は、その実態から食紅が人体へ与える影響までを解説していきたいと思います。
食紅はそもそも、何に使われているの?
野菜や果物以外の赤色の食べ物にはほとんど入っていると言っていいでしょう。清涼飲料水やお酒(有名なところではリキュールのカンパリ)、かき氷のイチゴシロップ、ピンク色のお団子、ハム、ソーセージ、かまぼこなどなど。
そして女性の必需品である口紅やアイシャドウ、チークなどの化粧品にも含まれています。私たちの身の回りには思いのほか食紅があふれているんです。
食紅の原料は何?虫?
人工的に作られた「合成色素」と自然由来の「天然色素」の2種類があります。
①合成色素
こちらは石油を原料とするタール系の色素からつくられるもので、発色が良く色が落ちにくいのが特徴。「食用赤色102号」のように、数字の名前が付けられています。
石油由来だなんて聞くと、食べても平気なのか気になりますが、実はこのタール系の合成色素、発がん性があり、大量に食べると死に至ることがあるそう。でもご安心ください。その致死量は200~300グラムで、普通の生活で口にしている分には決して超えることのない量と言われています。
国の規定によっても許容摂取量が決められており、国内に出回る合成色素では、基準値の100倍の量を摂取しても人体に影響が出ないとの声もあるほど安全性が考慮されてるので、毎日食べたとしても、大きく健康を損なうことはないでしょう。
しかし(!)最近の研究では、合成色素の摂取と子供の多動など行動障害との関連性が指摘されるようになり、合成色素を嫌がる人も増えてきました。それは石油が原料ですから、体に良いということはないはず。やはり食べるなら、ほどほどにしておくのが無難でしょう。
②天然色素
こちらは植物や生物から抽出される自然由来の色素です。例えば、ベニバナ色素や紅麹、トマトを原料とするリコピンなどが挙げられます。
合成色素に対して天然色素には安全そうなイメージがありますが、天然だからと言って必ずしも安全とは言えないようです。天然色素のうちのいくつかは毒性試験の結果によって無害であることが証明されているとはいえ、日本の規制はほかの先進国に比べると緩く、実際に「アカネ色素」などは安全性に問題があったために使用が禁止になっています。
何年か前に話題になったことがありましたが、天然色素の中には虫由来のものも含まれます。それが「コチニール色素」(カーマインやナチュラルレッドと呼ばれることも)。一般的に植物由来の色素は安定性が低くなりますが、コチニール色素は合成色素と比べても劣らないレベルと言われています。
この虫の主体は「コチニールカイガラムシ」と呼ばれ、主にサボテンなどの植物に寄生して樹液を吸って生きる小さな昆虫。メスの体を乾燥させ、体に蓄積された色素化合物を抽出したものが色素として利用されます。原産地の南米では、昔から薬や化粧品、織物、料理に使われてきた昔ながらの食紅なのだとか。
石油もなかなかですが、虫というのもまた気にかかることが色々と出てきますね。。まずは人体に与える影響。WHOの専門家委員会によると発がん性はなく、安全面の問題はないようです。
ごくまれにアレルギーや喘息を発症するケースがみられるようですが、これは色素そのもののせいではなく、製造の過程で除去しきれなかった虫由来のたんぱく質が原因と言われています。
ただ、記憶に新しいところでは数年前に、有名コーヒーチェーンのスターバックスがコチニールの使用を取りやめると宣言しました。いくら健康上のリスクはないと言っても、昆虫の抽出物を使用することに抵抗を覚える顧客から多くの要望が寄せられていたもよう。
日本では食品衛生法の添加物リストに載っていて、他の添加物と同様に表示の義務が課せられているので、口にしたくない場合は確認が可能です。
次世代の食紅は野菜由来!
上記の色素に替わる原料として、近年は野菜由来の色素の開発が進められていて、既に市場にも出回っています。特に有力なのが「ムラサキイモ」。明るいピンクから深い紫まで幅広いバリエーションの色を出せるそうです。
抽出が難しく効率が悪いという難点はあるようですが、今後、開発が進めば、より安心して使える食紅として活躍してくれるかもしれませんね。
まとめ
・食紅は石油由来の「合成色素」と自然由来の「天然色素」の2種類
・昆虫から抽出する食紅もあるが、発がん作用など健康上のリスクはない。まれに不純物が残っているとアレルギーを起こすことも
・いずれの原料を由来とする食紅も国の規定で安全な摂取量が決められている
・ただ近年は、合成色素が子供の行動障害に繋がるとの指摘がある
・現在、野菜を原料にした安全な食紅の開発が進められている
最近は書店でも食べてはいけないものを列挙した本をよく見かけます。確かに毎日のように口にするものに関しては、そのリスクを知らないと怖いですよね。
一切食べないと極端になる必要もないでしょうが、正しい情報を得たうえで、上手に食事を楽しんでいきたいものです。
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